2020年からずっと「COVID-19」、いわゆる新型コロナウイルス感染症のニュースが日々世界を騒がせております。
COVID-19の一症状として味覚障害=舌の症状があるという事で、舌の痛みを訴えつつ「コロナだったらどうしよう」などおっしゃる患者様もおられました。
これほど世間一般の人々が「ウイルス」に関心を寄せたのは史上随一かもしれません。
もとより、医学の歴史というより、人類史そのものが細菌やウイルスによる感染症との戦いと言っても過言ではありません。
まして私たち日本人は、毎日のように感染症研究者の肖像を見ているはずです。
現金に触らないキャッシュレス生活をされている方でもなければ。
近年ではウイルスにより生物が進化したのだという説もあり、もしこれが本当ならば、人類史どころか生物、地球の歴史そのものがウイルスの歴史であるのかもしれません。
などと壮大な書き出しになってしまいましたが、いずれにしろウイルスは我々人類にとって身近なものであり、誰でも感染して然るべきものであると言えるでしょう。
身近なウイルスの中でも、ヘルペスウイルスや水痘(水ぼうそう)/帯状疱疹ウイルスは、おたふく風邪(ムンプスウイルス)やウイルス性風邪ウイルス(旧型コロナウイルス)と並ぶ代表的なものと言えます。
この辺りのウイルスには、ほとんど全ての日本人が感染していると言っても過言ではありません。
そんな誰でも感染してしまうヘルペスウイルスや帯状疱疹ウイルスは、激痛を引き起こすことがあります。
これはヘルペスウイルスや帯状疱疹ウイルスが神経に棲みつき、神経そのものに症状を引き起こし、痛みを極度に感じやすくさせてしまうからなのです。
もう一つ厄介なことには、神経は治りが悪い組織であるために、一度損傷し症状を起こしてしまうと、ウイルスが活動をやめた後にも神経の症状だけが残ってしまう場合があるのです。
さらにまた厄介なことに、無水疱性といって、明らかな口内炎や潰瘍(水疱)を作らず神経だけに症状を生じる場合もあるのです。
つまり、口内炎や水疱といった目に見える症状があったかどうかも分からず、ただ痛みだけを感じてしまっている場合も珍しくない、ということなのです。
したがって、「絡み合った毛糸玉」の中にウイルス性疾患があるかどうかの診断は非常に困難です。
しかし、治療の過程で兆候が見られれば、抗ウイルス薬などの服用で舌痛が劇的に改善することもあります。
もとより目には見えず、野口英世の時代には見つけられず、現代においても世の中を騒がし、また口の中では症状すらごまかしてしまう、そんな厄介な存在がウイルスというものなのです。
この記事を書いている2021年4月中旬現在、大阪ではSARS-Cov2(新型コロナウイルス)のPCR陽性者が激増していますが、臨床の現場では、ヘルペス/帯状疱疹の患者様も増えているように思います。
ウイルスに感染しやすい季節、ということなのかもしれません。
寒暖の差が激しく体調が悪くなりやすいとか、入学入社転勤など人の動きが増えるとか、いろいろな要素が影響しているようにも思います。
こういう時季にこそ、十分な栄養と休息が必要なのだと痛感します。
栄養不良はウイルス感染を生じやすくするだけでなく、舌にも悪影響を及ぼすことがあります。
次回は、栄養不良について述べたいと思います。
口腔外科専門医
稲田 良樹
舌の痛みやしびれなど、
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※2023年11月1日新規開院