口の中にはおよそ700種類の細菌がすみついていますが、ほとんどは比較的毒性の弱い「弱毒菌」と呼ばれるものです。
その中でも舌の痛みに関係する代表的なものに、カンジダがあります。
口の中でカンジダが繁殖すると、白苔(はくたい)と呼ばれるカビの塊のような膜を作るのは典型的な例(偽膜性カンジダ)ですが、粘膜が赤くのっぺりとした感じになってしまう萎縮性カンジダというものもあります。
いずれにしろ、強い痛みではありませんが、舌痛症の特徴である「ひりひりしたような」痛みを生じることがあります。
明らかなカンジダ症の場合、抗真菌薬などの投薬で改善するはずなのですが、意外と改善に時間がかかることがあります。
本来、カンジダは弱い菌であり、健康な人で繁殖することはほとんどありません。
糖尿病などの全身疾患、低栄養、妊娠、高齢、ステロイドなどの常用または頻用、さらには口腔乾燥(唾液の減少)など様々な原因による免疫の低下があると、本来繁殖するはずのないカンジダがはびこってしまうのです。
したがって局所だけでなく全身的な改善が必要な場合も多々あり、数ヶ月投薬を続けることも珍しくありません。
特に舌の疼痛を訴える方の場合、以前にステロイド軟膏を処方された方も多く、次回に述べるウイルス性疾患とともに、慢性的なカンジダを生じているケースも珍しくありません。
受診された患者様のほぼ全員に、ステロイド軟膏は一切使わないようにをお願いしております。
ステロイド軟膏の塗布は、潰瘍などの痛みを一過性に抑えてはくれますが、ウイルスやカンジダの活性化、慢性化を起こす可能性があり、この毛玉をさらに硬く絡めてしまう恐れがあるのです。
また、強い消毒作用を持つうがい薬の頻用でも、他の菌が減った結果カンジダが増殖しやすくなる日和見感染を生じることがありますので、2.の項で述べた事も含め、そのようなうがい薬の使用は控えていただいております。
次回は、カンジダと同じように誰でも持っているウイルスについてお話しさせていただきます。
口腔外科専門医
稲田 良樹
舌の痛みやしびれなど、
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※2023年11月1日新規開院