前回の記事に引き続き、舌の痛みを伴うこともある「目に見える」病気についてご説明してみたいと思います。
「舌が荒れている」「舌に何かできている」という訴えで受診される方は少なくありませんが、その大半がこの地図状舌です。
舌の中央や側縁部に白く帯状に囲まれた円形~楕円形の赤い斑紋がいくつもあらわれ、地図のように見えるのでこのように呼ばれます。
現在のところ原因は不明であり、病的なものではないとされますが、病理組織学的には炎症があり、また舌の表面にも異常がありますので治療すべきかどうかは意見が分かれるところです。
抗真菌薬で痛みが消えたり軽くなったりすることもありますので、カンジダが何らかの悪影響を与えている可能性も考えられます。
「舌の真ん中が赤いんです」「舌の上に何かできてるんです」という訴えが多いのが正中菱形舌炎です。
「炎」という名前なので炎症か何かの病気かと勘違いしがちですが、実際には形成不全(奇形)の一種で、お母さんのお腹で体が出来上がる際に、消失すべき器官が残ってしまったものと言われています。
舌の中央、奥から1/3あたりに菱形~楕円形の周囲より赤い部分が見られます。
この部分には舌の器官である乳頭はなく、そのため平滑になっています。
通常自覚症状はありませんが、正常な粘膜表面ではないので圧迫や摩擦などのなどの刺激で痛みが出やすいこともあるようです。
舌だけでなく、頬粘膜や歯肉、唇などにもできる粘膜疾患ですが、ほとんどの方に自覚症状はなく、偶然気づいて受診される方が多い疾患です。
なんらかのアレルギーのようなものが原因となる炎症により粘膜が角化異常を生じてしまった疾患であろうと考えられていますが、詳細は不明です。
粘膜の赤みとその上にレースをかけたような独特の見た目であり、また両側性に出現することが多いのでわかりやすいのですが、根本治療法はないので痛みなどの自覚症状がある場合には、とたんに治療が難しくなるという問題を抱えています。
ステロイド軟膏が有効な特殊な疾患はまさに扁平苔癬のことを指しているのですが、繰り返し述べてきたようにステロイド剤を使い続けることで他の病気を誘発してしまうことも珍しくなく、たとえば扁平苔癬にカンジダを併発したような方はよく見受けられます。
また歯肉にできた場合では歯周病を相乗的に悪化させることも良く見受けられます。
歯周病と扁平苔癬のいずれも炎症性疾患ですので、混じり合った場合には歯肉出血が増え、そのことでさらに歯周病が悪化する、という方も多く受診されています。
このような場合には扁平苔癬と歯周病の治療を同時進行させ、症状が落ち着くまでには数ヶ月かかることもよくあります。
ただし清潔を保ち保湿するだけでも自覚症状は改善することが多く、投薬などもあわせれば、時間はかかるにせよ確実に改善は望める病気ですので、気長につきあっていくよう患者様には説明させていただいております。
口腔外科専門医
稲田 良樹
舌の痛みやしびれなど、
お気軽にご相談ください。
※2023年11月1日新規開院