今回は舌痛症とストレスについての解説です。
最初の記事の冒頭で、「舌が痛くて歯科医院や内科、耳鼻科、はては病院も受診したけど何も病気はないと言われ」る方が多いと書きましたが、それに次いで多いのが「ストレスのせいではないか」です。
おそらくは「精神的な圧迫」の意味での「ストレス」だとは思いますが、そんなものが舌の痛みに直結することはほぼないと言っていいでしょう。
ただし、これまでに述べた口腔乾燥やむくみなどは、舌に対する「生理的なストレス」ではあります。
「ストレス」を「負荷」という意味でとらえるならば、舌の痛みの原因は生理的、精神的、物理的など、様々な「ストレス」であると言えます。
では、「精神的なストレス」に限定して、舌に対する悪影響はどうなのか、それをここでは説明したいと思います。
「ストレスで胃が痛い」とはよく聞く言葉です。
世間一般の常識としても当たり前のことと認識されていると言って良いでしょう。
ストレスにより胃腸の働きに異常をきたすと、栄養吸収の不良や体内の電解質異常をきたし、その結果口腔乾燥やむくみを生じてしまうことになり、それが高じると痛みが出てくるということになります。
「緊張したら喉が渇いた」経験は誰にでもあると思います。
精神的なストレスや緊張状態は唾液の分泌を減少させます。
これが慢性的に続いていると、口腔乾燥症、ひいては舌痛症を生じる場合があります。
精神的なストレスがかかると、多くの人はそのはけ口としていろいろな癖を作ります。
たとえば、徳川家康はストレスで爪を噛むのが癖だった、と言われています。
口にまつわる癖は、爪を噛むだけでなく、食いしばったり、唇をかんだり歯でしごいたり、舌を歯に押し当てたり吸い付けたりと、様々なものが考えられます。
このような悪習癖により、舌が腫れたり擦れたりして痛みが出ていることは珍しくありません。
風が吹けば桶屋が儲かる、ではありませんが、ストレスは間接的に舌に負荷をかけます。
できることならストレスのない生活を送っていただくのが何よりではありますが、そうも行かないのが現代社会でもあります。
この辺りは非常に難しく、口腔悪習癖の改善の面でも悩むところではあります。
次回は、その口腔悪習癖についてもう少し詳しく述べたいと思います。
口腔外科専門医
稲田 良樹
舌の痛みやしびれなど、
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※2023年11月1日新規開院