今回は舌のむくみについて解説します。
手足のむくみでお悩みの女性も多いと思います。
インターネットで検索してみれば、むくみを防ぐストッキングの紹介ページなどが無数にヒットします。
実は、このむくみも舌痛症の一因となる場合があります。
手足のむくみによる痛みや違和感をご存じの方であれば理解しやすいかと思いますが、「しびれたような痛み」、「ビリビリするような痛み」が生じると言われています。
舌痛症の患者様の多くは、舌の「しびれたような痛み」「ビリビリ/ヒリヒリするような痛み」を訴えて受診されます。
痛みの性状が似ていることからも、むくみによる痛みが手足だけでなく舌にも生じることがご理解いただけると思います。
むくみの原因には心臓、腎臓などの内臓疾患、降圧剤などの薬、生活習慣や体質など、様々なものがありますが、これに加えて食いしばりや吸い付けるような癖(吸啜癖)などの口腔悪習癖も大きく影響します。
舌に力が入り続けることで当然むくみは生じますし、吸い付けて陰圧を加え続けることでもまたむくみは生じます。
最初の記事で「(原因となるものの)いくつかが複雑に絡み合い、舌に対して負担をかけ続けた結果が、「痛み」を引き起こす」と書きましたが、これはその代表的な一例と言って良いでしょう。
さて、むくみを改善するために、内科的には利尿剤がよく用いられますが、ならば「コーヒーなら利尿作用があるので飲んだらいいのでは?」などと訊かれることがあります。
これには二つの理由で「NO」と返答することにしております。
まず第一には、利尿作用により水分を排出してしまうと、唾液の減少、口腔乾燥を生じる可能性が高いからです。
繰り返しますが、舌痛症は「(原因となるものの)いくつかが複雑に絡み合い、舌に対して負担をかけ続けた結果が、「痛み」を引き起こす」のであり、前の記事で書いたように、口腔乾燥もその一因です。「絡んだ毛玉を解きほぐすように一つ一つの原因を改善、除去していくのが舌痛症の治療であると言えます」と書きましたが、むくみを改善するつもりで口腔乾燥を生じてしまえば、一つは改善しても他のものが悪化することになりますので、結果として治療効果が得られない、ということになってしまいます。
第二には、そもそもコーヒーなどカフェインによる利尿では浮腫の改善は得られないからです。
というのも、カフェインは体内のカリウムやナトリウムなどの電解質のバランスを崩すと言われています。
電解質のバランスが崩れると体内の水分調節がうまくいかなくなり、結果的にむくみを悪化させてしまう可能性もあります。
また、カフェインは胃腸の働きを低下させますので、タンパク質の吸収が低下します。
電解質だけでなくタンパク質も体内の水分バランスの調整に必要ですので、タンパク質が低下すると当然水分バランスは崩れます。
このような理由で、コーヒーなどカフェインを含む飲み物はむしろ勧められないので、できるだけ飲まないようにお願いしています。
ただし、好きなものを我慢する事はストレスそのものですので、絶対禁止とは言いません。
ストレスもまた、舌痛症の一因です。
次の記事では、ストレスとの関わりについて説明します。
口腔外科専門医
稲田 良樹
舌の痛みやしびれなど、
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※2023年11月1日新規開院