まだまだ暑い日が続きますが、間もなく9月。
秋が始まります。
秋の次は冬と、空気が乾燥していきます。
そんな時期に気を付けたいのは、ドライマウス。
本日は、ドライマウスが起こすお口のトラブルと、その対処法についてお話ししたいと思います。
私たちは普段、食べたり話したり笑ったりするときに、口の中の潤いを意識することはあまりありません。
しかし、この当たり前のはずの潤いが失われると、思いがけない不調につながることがあります。その代表的なものがドライマウスです。
風を引いた時に鼻が詰まって口呼吸になったり、水分補給をするタイミングを逃したりすることで、「口が乾く」という経験をされた方は多いかと思いますが、それはあくまで「一時的な渇き」です。
ドライマウスは、そのような一時的な渇きではなく、慢性的に唾液の分泌が減少してしまう状態を指します。
唾液は単なる水分ではありません。
食べ物を湿らせて飲み込みやすくする働き、口腔内を自浄する働き、さらには細菌の繁殖を抑える働きなど、健康を保つ上で欠かせない役割を担っています。
そのため、唾液が減ると以下のような不調が現れやすくなります。
・口の中がネバつく
・食べ物の味が分かりにくくなる(味覚障害)
・義歯が合いにくくなる
・むし歯や歯周病のリスクが高まる
日本では特に中高年以降に多く見られ、推定で800万人以上がドライマウスに悩まされているといわれています。
ドライマウスの症状が出る背景には様々な要因があります。
以下に、主な要因をまとめてみます。
【加齢】
加齢により、唾液腺そのものの働きが年齢とともに低下することがあります。
【薬の副作】
高血圧薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬など、口の渇きを副作用として持つ薬は数百種類にのぼります。
複数の薬を服用していると、症状がより強く出ることもあります。
【全身疾患】
糖尿病やシェーグレン症候群など、体の病気が原因で唾液の分泌が減ってしまう場合があります。
【ストレスや緊張】
交感神経が優位になると唾液分泌が抑えられ、口の渇きが強まります。
【生活習慣】
喫煙やアルコール、カフェインの摂取、慢性的な口呼吸もドライマウスを悪化させる要因です。
さて、ドライマウスが起こす症状と要因についてまとめてきましたが、「舌痛症」にも触れていきたいと思います。
「舌痛症」は、見た目には何も所見が無いのに、舌に痛みを感じるという疾患のことです。
舌痛症が起きる要因は、心理的ストレスや神経の異常が関与すると考えられていますが、そのストレスや神経異常のトリガーとして、ドライマウスが挙げられます。
唾液が減ると舌の粘膜が乾燥し、ドライマウスとなります。
この状態では、少しの刺激でも痛みを感じやすくなります。
また、口の中の菌のバランスが崩れることで炎症を起こしやすくなり、これが舌痛症の痛みを増幅させることもあります。
つまり、ドライマウスが舌痛症の背景に潜んでいる場合が少なくないということです。
ドライマウス、ひいては舌痛症の症状を和らげるためには、日常の工夫が欠かせません。
こまめな水分補給、ガムや飴で唾液を促す、口呼吸を控える、規則正しい生活とストレス管理などが挙げられます。
ただし、症状が続く場合は、迷わず歯科口腔外科や耳鼻咽喉科などを受診しましょう。
医院では、唾液分泌量の検査や服用薬の確認、血液検査や問診などにより、総合的に症状の要因を探ります。
特に、舌痛症と診断された場合は、目に見える症状が無いのに痛みと不安が相互に起こるという悪循環を生みやすいため、「病気ではない」と突き放すのではなく、医師と患者さんが共に症状と向き合う姿勢が大切です。
ドライマウスや舌痛症は「命に関わる病気」ではないかもしれませんが、慢性的に続くことで生活の質を大きく下げてしまいます。
食事が楽しめない、会話を避けてしまう、不眠や気分の落ち込むなどの悪循環に陥ってしまうこともあります。
そのため、身体的な治療と同時に心のケアも重要になります。
家族や周囲が理解を示し、本人が「症状を抱えながらも暮らしていける」と思えるような環境づくりが求められます。
口の中の潤いは、私たちが思う以上に心身の健康と深く関わっています。
ドライマウスは単なる渇きではなく、舌痛症をはじめとするさまざまな不調の引き金となり得ます。
「最近、口がよく渇く」「舌がヒリヒリしてつらい」
もしそのような症状があるなら、それはあなたの身体からの確かなSOSです。
小さなサインを放置せず、まずは生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。
症状そのものを完全に消すことは難しい場合もありますが、適切なケアを積み重ねることで、痛みや不快感と上手に付き合っていくことは可能です。
お悩みの場合は、ぜひ一度、医院にお越しください。お待ちしております。
舌の痛みやしびれなど、
お気軽にご相談ください。
※2023年11月1日新規開院