舌にヒリヒリとした痛みやピリピリとした痺れが現れたとき、患者様の多くは薬局に薬を買いに行くことと思います。僕たち医療従事者は、病院や歯科医院で薬をもらった方が適切でよく効き、さらに保険適応になるから安いと知っていますから、医療機関に走ります。だからあまり市販薬には縁がないのですが、舌痛症の患者様が飲んでいる市販薬を見て驚くことが多いので記事にしてみました。
ステロイドは炎症を起こしている部位に塗布することで、炎症を抑える薬です。主に口内炎の塗り薬に含まれています。
こちらは飲み薬に含まれていて、やはり炎症を抑える働きがあります。
舌痛症の原因は多岐に渡っていて、炎症を抑えれば治るというものではなく、またそもそも炎症が原因でない可能性もあるため上記の薬剤が全く無効である場合も多いです。現に当外来ではこれらの炎症を抑える薬剤を処方せずに舌痛症の症状を和らげたり消失させたりすることに成功しています。
血液中の微量元素やビタミンが不足すると舌が荒れ、ヒリヒリとした感じが現れます。この場合、ステロイド軟膏は症状の緩和には効果があるかもしれません。しかしながらステロイドの効果は一時的であるため、塗り続けなければ症状に苦しむことになります。
ステロイドは口の中の細菌のバランスを崩すという副作用があります。長期間塗り続けてしまうと細菌が入れ替わり、口腔カンジダ症という真菌(カビ)が現れた状態になります。このカンジダという菌はまた、口をヒリヒリさせるので、長い目で見れば症状は悪化すると言えます。
そのため適切な検査や治療を受け、舌痛症の症状を取り除くことが重要です。
唾液の分泌量は加齢とともに低下していきます。また病院で処方されている持病のお薬が原因で口が渇いているという可能性もあります。このような理由で口が渇くと、口の中のヒリヒリとした感じが出現する場合が多いです。特に更年期以降の女性の患者様は口が渇いていることが多いため注意してください。
この口が渇くことによる舌の痛みは炎症ではありませんので解熱鎮痛剤では消失しません。
社会生活や日常生活のストレスや、それに伴う不眠などから痛みに対する不安、落ち込みなど、精神的な負担があると痛みが現れることがあります。心因性慢性疼痛という疾患に分類されるしっかりとした原因ですので、当外来でもきちんとそれに対応します。これらももちろん炎症ではありませんので、市販薬は無効です。
このように舌及び口腔のヒリヒリ感には、まず専門家による原因の特定から始まり、治療を進めていく必要があります。効かない薬を継続しても副作用が出現するだけですので、ぜひ当外来で治療を受けていただきたく思います。症状が現れたらすぐに舌痛症外来へお越しください。
舌の痛みやしびれなど、
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※2023年11月1日新規開院