舌痛症には様々なタイプがありますが、口腔内灼熱症候群(バーニングマウスシンドローム)という、口の中に広範囲に生じる痛みや痺れが、舌に限って発生した場合を指すという考え方があります。
そのため舌痛症の治療には口腔内灼熱症候群の治療法が有効になるケースが多々あります。
口の中に目にみえる口内炎のような異常がない人の舌や口の中に痛みが生じる病気で、様々な原因が複雑に絡み合って発症します。焼けるような痛みやピリピリした感じ、麻痺したような感覚が口全体や舌だけに起こり、持続的な場合と途切れ途切れに発生する場合があります。多くは口の中を湿った状態にすると症状が緩和されます。
■口腔内を湿らせる
■場合によっては抗うつ薬や抗不安薬
■原因除去が可能であれば原因を除去
本記事では治療の中の抗うつ薬について注目してみようと思います。
抗うつ薬による口腔内灼熱症候群の治療
Y. Yamazakiらによる研究(Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2009 Jan;107(1):e6-11.)から、口腔内灼熱症候群にパロキセチン(商品名;パキシル)という抗うつ薬を使用したデータをご紹介します。
この研究では口腔内灼熱症候群の患者様に、パキシルを1日10または20mg投与(最大量30mg)し、12週間経過を観察しました。
52人が追跡調査が可能で、そのうち42人に効果があったと報告されています。つまり80.8%に症状の改善が見られたということです。
さらに12週間追跡調査をした中で、70.4%の患者様が完全に痛みが消失しました。
副作用は10mg人の41%に、20mg投与した人の76%で、量を増やすと発生する頻度が高まる傾向にあります。
このように抗うつ薬の有効性ははっきりとデータとして報告されています。
パキシルの投与について
パキシルは最大1日40mgで、5mgから錠剤がありますのでこの研究で使用した量というのは少量と言っていいと思います。
そのため副作用も発生したとはいえ患者様も受け入れられる程度だったのだろうと思われます。
当院での処方もこの程度の量ですので、ご心配なさらず服用していただきたく思います。
口腔内灼熱症候群と舌痛症
舌痛症は口腔内灼熱症候群の一つのタイプととらえる見方もあります。
そのため患者様の口腔内を拝見して、口腔内灼熱症候群と診断した場合、それに準じて治療を開始します。
治療期間自体は上記のパキシルを使用しても3ヶ月かかっていますし、その他のお薬だと6ヶ月程度、効果が出るのを待たなければならないものもあります。
舌痛症治療は長い道のりになりますが、担当医と二人三脚で最良の道のりを歩みましょう。
医療法人光惠会
舌痛症外来担当医 小林隆洋
舌の痛みやしびれなど、
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※2023年11月1日新規開院