舌が痛む原因は?
例えば、髪の毛1本が入った時の事を思い出してみてください。たかが髪の毛1本でも、ものすごく大きな異物が入った感覚ではありませんでしたか?口の中の感覚はそれほどに敏感なのです。その敏感さゆえ、病気とは言えないわずかな異常でも、痛みと感じてしまうことがあるのです。舌の痛みを訴える患者様の多くは、以下のようなわずかな異常をいくつか積み重ねた結果として、舌の痛みを感じておられるのです。
- 口腔内が乾燥している場合
自己免疫疾患、内科的疾患やそのための服薬、年齢、性別、体質、何らかの原因で唾液の減少=口の渇きを生じることは珍しくありません。口腔内は全て粘膜なので、湿っていないと感覚の異常=痛みを感じてしまうことがあります。口腔内を湿らせてあげるだけでも痛みが軽くなる方は珍しくありません。
- 口腔粘膜がむくんでいる場合
(1)と同じような原因で、舌をはじめとした粘膜に「むくみ」が生じ、そのために痛みを感じてしまう事があります。手足のむくみで痛みを感じられた女性も多いのではないでしょうか。手足だけでなく、舌のむくみも痛みを生じてしまう事があるのです。
- 口腔常在菌が繁殖している場合
歯磨きうがいを怠り、不潔にされていると当然粘膜にも異常をきたす場合がありますが、舌痛を訴えて受診される患者様は、むしろしっかり歯磨きをされ、定期的な歯石除去を受けるなど清潔を保っておられる方がほとんどです。しかし清潔を保っていても、乾燥や薬の副作用などで誰にでもある常在菌が繁殖し、粘膜炎や痛みの原因となる場合があります。
- ウイルス性疾患が原因となる場合
日本人のほぼ100%が罹患しているとされるヘルペスウイルスや水痘/帯状疱疹ウイルスは口内炎を生じるウイルスです。これらのウイルスは神経に住みついているため、神経麻痺や神経痛を生じる事があります。神経は治りがとても遅い組織なので、一旦症状が生じると痛みが治るまでに時間がかかる場合も珍しくありません。
- 食いしばりが原因となる場合
舌はそのほとんどが筋肉でできています。激しい運動だけでなく、同じ姿勢を保つだけでも腕や足の筋肉痛が生じるように、舌にも筋肉痛が生じる場合があります。無意識の内に歯を食いしばり、頬や舌に力を入れている人は珍しくありませんが、筋肉痛だけでなく、むくみや圧迫を生じる事で痛みが生じる場合もあります。
- ストレスが原因となる場合
舌の痛みを訴え、他の医院を受診し「ストレスや精神的なもの」と簡単に済まされ何も対処してもらえなかった、そんな辛い経験をお持ちの患者様が多く当医院を受診されています。ストレスは確かに舌痛の原因となります。しかし精神的な理由だけではなく、ストレスにより乾燥や免疫の低下や食いしばりが起こり、それにより痛みが生じてしまう事がほとんどです。
- 栄養不良が原因となる場合
栄養不良によるミネラル不足や貧血も舌痛の原因となります。ただしこのような場合、明らかな舌炎が生じている事が多く、また全身症状が現れる事がほとんどです。